東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)20号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件登録実用新案の要旨及び本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告訴訟代理人は、本件審決は、次の点において違法であるから取り消されるべきものである旨主張するが、この主張は、以下説示するとおり理由がないものというほかはない。
(一)原告訴訟代理人は、本件登録実用新案が、その出願前公然知られた事項の単なる寄せ集めにすぎないことは、特許庁に顕著な事実であるから、本件審決がこれを無効とするに足る立証資料がない、としたことは違法である旨主張するが、本件登録実用新案が公知事項の単なる寄せ集めであるというためには、その前提として具体的に如何なる公知事項と如何なる公知事項との集合であるかを指摘して特定することが必要なところ、原告が審判手続において、審理終結の通知を受けるまでその主張を明らかにしなかつたことは、弁論の全趣旨により明らかであるから、右主張はすでに前提において失当であり、審決が原告の請求を排斥した点には違法はない。たとえ、原告が審理終結通知を受けて後、審理再開願を提出してその主張を明らかにしようとしたとしても、その審理が再開されるまでに至らなかつた本件では、この点に関する結論を異にすることはない。
(二)原告訴訟代理人は、また、本件審決が、職権による証拠調を実施して本件登録実用新案が公知事項を単に寄せ集めたものであることを確定することなく、本件審判請求は成り立たないとしたことをもつて審理不尽の違法があると非難する。しかしながら、実用新案登録無効の審判手続においては、当事者の申立によるほか、職権により証拠調をすることができることは法(実用新案法第四十一条、特許法第百五十条第一項)の明定するところではあるが、これは、当事者の申立がない場合においても、審判の必要に応じ、職権をもつて証拠調をすることができることを規定したにとどまり,常に職権をもつて、これをしなければならないことを規定したものではないと解するを相当とするから、原告訴訟代理人の非難は当らないといわざるをえない。この点に関し、同代理人は、さらに、もし職権による証拠調をすれば、本件登録実用新案が公知のものを寄せ集めたものにすぎないことは、きわめて明白となつたはずである旨主張するが、これを肯認するに足る証拠はなく、かえつて、本件登録実用新案と原告主張の条公知例の技術内容と本件登録実用新案とを対照し、かつ本件口頭弁論の全趣旨に徴し明らかな本件実用新案の登録出願の審査手続において、原告主張の公知例に基づく異議申立が理由がないとされた事実に鑑みれば、本件登録実用新案は、原告主張の各公知技術を寄せ集めることにより容易に考案できるものと断定できるまでには至らないから、原告の右主張を容認することはできない。
(むすび)
三 以上説示のとおりであるから、その主張の違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。
第一図面
第1図
第2図
第二図面
第1図
第2図
第3図